おおらかに生きよ~天空海闊

「これからは君たちの時代だ」
1945年8月、当時の鈴木首相は
「天空海闊(てんくうかいかつ)」と記した掛け軸を、歴代首相の運転手を務めた柄沢好三郎氏に手渡した。
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天空海闊は当時の鈴木首相の座右の銘で「空や海が広々としているように、おおらかに生きよ」という意味を込めたとみられる。

終戦前日の8月14日、日本は無条件降伏を求めるポツダム宣言の受諾を決定。
反対した一部の軍人らが15日未明に首相官邸を襲撃し、鈴木の不在を知ると東京都内の自宅へと向かった。

鈴木夫妻は着の身着のまま柄沢氏が運転する車に乗り込み自宅を後に。
車がやっと走りだしたとき襲撃隊が到着し、家は焼き払われた。
鈴木首相は運転手の柄沢氏と都内を転々とし、郊外の知人宅に10日ほど身を潜めた。
そこで書をしたためたとみられる。

鈴木首相は柄沢氏に、戦争を続ければ日本が分割統治される可能性を説き「敗戦ではない、終戦だ」と前向きに捉えるよう語り掛けたという。

★今日の四字熟語は★

天空海闊(てんくうかいかつ)

「天空海闊」とは、

大空にさえぎるものがなく、海が広々としていることから、転じて、度量が大きく包容力に富み、何のわだかまりもないこと。

海闊天空とも言います。

【天空】:空が晴れ渡りどこまでも広いことです。
【海闊】:海が広々していることを表します。

【闊】は、「門+活」から出来た形声文字です。
音符号の「活」は、生命の生き生きとして勢いのある状態、力を表します。
門と組み合わさって、通る、広いという意味となりました。

出典:『古今詩話』

海闊従魚躍
海は広々として自由に魚をおどらせ

天空任鳥飛
大空は雲一つなく鳥が飛ぶのにまかせている

この詩は『古今詩話:ココンシワ』に記載されている句で、
唐の大暦年間(766~779)の僧元覧(ゲンラン)の、【大海魚の躍るに従い、長空鳥の飛ぶに任す】が基になっている。
という説明がありました。

<文例>
人間の性質が碁石の運命で推知する事が出来るものとすれば、
人間とは天空海濶の世界を、我からと縮めて、己の立つ両足以外には、どうあっても踏み出せぬように、小刀細工(こがたなざいく)で自分の領分に縄張りをするのが好きなんだと断言せざるを得ない。
『吾輩は猫である』夏目漱石(著)

あとがき

災害が多く感じられた令和元年。
それでもそれでも幸せな行事も行われた。

天空海闊という四字熟語に出会い、ふと、日本人の心の底辺に流れる気概はすてたもんじゃない!と思った。
なぜなら、
突然の自然災害に見舞われても、どんなに悔しく悲しくても、復興に対して前向きに進んでいるのだから。


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