背水之陣~テニス大坂なおみの不利から有利な状況へ

haisui-no-jin2

今日の四字熟語は
背水之陣(はいすいのじん)

勝ち目のない戦い

中国の楚漢戦争の中で
漢軍と趙(ちょう)軍とが激突した戦い。

漢軍は寄せ集めの軍勢であり、どう考えても勝ち目のない戦いです。
しかし漢軍の韓信(かんしん)には秘策がありました。

★今日の四字熟語は★

背水之陣(はいすいのじん)

背水之陣とは

背水之陣とは、川や沼などを背にして、
逃げ場をなくした陣立てをいいます。

漢の名将韓信が趙の軍と戦ったときに、わざと川を背にして陣をとり、味方に退却できないという決死の覚悟をさせ、趙の軍勢を破ったという故事に基づいた四字熟語です。

絶体絶命の状況の中で、全力を尽くすことのたとえ。

漢王の三年(B.C.204年)、漢軍と趙(ちょう)軍の攻城戦。
趙軍は20万の兵力を持っていたのだが、一方の漢軍はわずかに2万2000。

しかも遠征で疲れている寄せ集めの軍勢で、普通に考えればどう考えても勝ち目のない戦いです。

しかし漢軍の韓信(かんしん)には秘策がありました。

韓信は、軽騎兵2千人に自軍の幟を持たせ、こう指示した。「敵軍は我々が逃げるのを見ると、追撃しようと城から出てくるはずだ。お前らはその隙に城に入り、敵軍の幟を抜きこの幟を立てるんだ。」
さらに、韓信は1万の兵を川を背にした形で陣取らせた。

川を背にしているので逃げ場がない漢軍は死に物狂いで戦った。

寄せ集めの軍と言えど、逃げ場がなければ必死に戦わざるを得ない。

しかも川で背後に回られる心配はないだけでなく、側面を守る為の騎兵を別働隊として活用することができる。

結局、20万の趙軍は韓信を討ち損ない、あきらめて城に帰ろうとしたのだが……。
趙軍は幟の色が変わったことに
「すでに漢軍に占領されただと!?」
と驚き大混乱に陥った。

水を前にして山を背に陣を張るのが布陣の基本であり、これを見た陳余は「韓信は兵法の初歩も知らない」と笑い、
兵力差をもって一気に攻め滅ぼそうと、ほぼ全軍を率いて出撃、韓信軍に攻めかかった。

しかし、趙軍は攻めあぐね被害も増えてきたので嫌気し、いったん城へ引くことにした。
ところが城の近くまで戻ってみると、そこには大量の漢の旗が立っていた。

大量にはためく漢の旗を見て趙兵たちは「漢の大軍に城が落とされている」と動揺して逃亡を始め、さらに韓信の本隊が後ろから攻めかかってきたので、挟撃の恐怖にかられた趙軍は総崩れとなり敗れた。

兵は死地において初めて生きる

後にこの布陣で何故勝てたのかと聞かれた韓信は、「私は兵法書に書いてある通りにしただけだ。
即ち『兵は死地において初めて生きる』(兵士たちをどこにも行き場のない窮地に置けば、おのずと勇戦力闘する)『孫子』九地篇)と答えている。
これが背水之陣で挑んだ結果、見事成功した。

現在でも「背水之陣」は、退路を断ち(或いは絶たれ)決死の覚悟を持って事にあたるという意味の故事成語となっています。

しかし、韓信はそれだけでなくわざと自軍を侮らせて敵軍を城の外へ誘い出し
背水之陣で負けない一方、さらに、空にさせた城を落として最終的に勝つための方策も行っていることを忘れてはならない。

こうして見ると実は”背水之陣“というのは、よく日本で使われるような、
“退路を断って死ぬ気でやればなんでもできる”というような精神的スローガンとは全く無縁のものであることがわかります。

一見して不利な状況を逆手に取り、実は自分に有利な状況を作り出す巧妙な作戦、
これが本来の背水之陣なわけです。

これが単なる賭けではない点は、事前に間者(スパイ)を多く放ち情報収集しているところにも見ることが出来ます。
韓信が稀代の名将と言われる所以です。

あとがき

覚悟を決めた兵士たちは生き延びようとする一心で敵を打ち倒そうとする強兵となる。

ある人がおもしろいことを言っています。
「覚悟した者」は「幸福」である。
なぜなら「覚悟」は「絶望」を吹き飛ばすからだ。

大坂なおみ選手が全米オープン初優勝!

2018年9月8日、テニスの全米オープン女子シングル決勝において、大坂なおみ選手が 6-2、6-4のストレート勝ちで初優勝した。
対戦相手のセリーナ・ウィリアムズ選手は大坂なおみ選手が子どもの頃から大尊敬している人。

この決勝戦はセリーナ選手が主審と言い争い、ラケットを叩きつけて壊したりして、たびたび警告を受けたりした前代未聞の展開だった。

にもかかわらず、大坂なおみ選手は「ガマン」を盾に集中を崩さず落ち着いて、品格の高いプレーによって勝利を手にした。

表彰式で優勝者の大坂なおみ選手が涙ながらに、「こんな終わり方になってしまって、ごめんなさい」と言った時点で、観戦していた観客はいっぺんに大坂選手のファンになった。

背水之陣とは随分かけ離れたテニス試合のお話ですが、敵に勝つ!には相当な覚悟が必要だということを目の当たりにしたのでした。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る