依怙贔屓(えこひいき)の本当の意味

eko-hiiki

★今日の四字熟語は★

依怙贔屓(えこひいき)

誰でも知っている四字熟語です

しかし、その真の使い方を理解している人は
どのくらいいるのでしょう?

ここでは、表面上の意味から入りますが、
その深い意味は後半を読むにしたがって
分かると思います。

「えこひいき」とは、
自分が気にいった者だけを
ほかの人よりも特別に可愛がったり、
肩をもつこと。

「依怙(えこ)」は頼ること、
頼りにするもの、として使われていましたが

中世頃から
「頼りとする者を支援する」という意味でも使われ、
自分だけの、つまり一方だけを肩入れする意味に転じたのです。

「贔屓(ひいき)」だけでしたら、
「気にいっている者の応援」なので、
あまり違いはなかったのですが‥

「えこ」が付くと、非常に極端な場合を言うようです。

贔屓(ひいき)の「贔」は「貝」が3つで、
「財貨が多くあること」を表したもの。

「屓」という字は、古くは「尸」の下に貝が3つあり、
財貨を多く抱えることを表しました。

この「財貨を多く抱える」が、
「大きな荷物を背負う」を経て、
「盛んに力を使う」の意味を持つようになりました。

贔屓(ひき)をひいきと読むのは
詩歌(しか)をしいかと読むのと同じ慣用読みだからです。

贔も屓もそれぞれ一字では用いず、二字連ねて用います。

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中国の伝説によると、
「贔屓」は龍が生んだ9頭の神獣のひとつで、
その姿は亀に似ていたそうです。

重いものを背負うのを得意とし、
そのため古来石柱や石碑の土台に
用いられることが多くなりました。

日本の諺「贔屓の引き倒し」とは、
柱の土台である贔屓を引っぱると
柱が倒れることからだそうです。

【依怙】だけで、【依怙贔屓】の意味を持ち、
更に【贔屓】の語を重ねることで、
かたよったさまを強調しました。

夏目漱石『坊っちゃん』の依怙贔屓

清が物をくれる時には
必ずおやじも兄も居ない時に限る。

おれは何が嫌いだと云って人に隠れて
自分だけ得をするほど嫌いな事はない。

兄とは無論仲がよくないけれども、
兄に隠して清から菓子や色鉛筆を
貰いたくはない。

なぜ、おれ一人にくれて、
兄さんには遣(や)らないのかと
清に聞く事がある。

すると清は澄(すま)したもので
お兄様はお父様が買ってお上げなさる
から構いませんと云う。

これは不公平である。
おやじは頑固だけれども、
そんな【依怙贔負】はせぬ男だ。

しかし清の眼から見ると
そう見えるのだろう。

依怙贔屓の使い方

勝つチームづくりのキモとして、
こんな考え方がある。

ある高校の野球部の監督は
選手たちのチームづくりに「えこひいき」を使う。

「われわれが目指しているのは、
強豪校と互角に渡り合って撃破することです。

みんなで厳密に公平な練習をして、
ちょっとずつうまくなっても、
誰一人勝負できずに終わります。

だったら、
一人でも二人でも「えこひいき」して、
いいバッターが育ったら、
相手チームに太刀打ちできるかもしれない。

選手に不満があっても、
その不満を引き受けるのは、
こっちの仕事です」(監督談)

誤解がないようにつけ加えると、
「えこひいき」するのは資質にすぐれ、
チームのリーダー役を担えると見込んだ選手だ。

チームの目的が「勝つこと」であれば、
そのための布陣を組む。

勝つために、チームのやる気を出すために、
考え出した方法だ。

タテマエだらけの世の中で、
人を動かすのは「本音」である。

あなたは本音で語るリーダーの資質に
気付いているだろうか。

あとがき

『坊っちゃん』に見られる「えこひいき」は、
子どもの目で見て感じた不公平の一つ。

本当は可愛がりの表れかもしれないのに、
まっすぐな少年にはそこまで見えない。
夏目漱石はきれいな表現をされています。

また、野球監督のお話には、
依怙贔屓の表面よりも、
内面にある、ずっと奥深いものに驚かされました。


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