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薬石無効の意味~医師の努力どこまで

★この四字熟語の意味は★

薬石無効(やくせきむこう)

薬や医者の治療の効きめがないこと。
結局、手を尽くした甲斐なく、亡くなってしまうときに使われます。

訓読では、「薬石、功無し」と読みます。

「薬」は、薬草。
「石」は、石で作った漢方の鍼(はり)のこと。
また、鉱物を原料とする薬ともいわれます。転じて「薬石」で薬の総称。
「無効」は、効き目が無いことを表します。

唐の16代宣宗(センソウ:847年~859年)が自分の病の重いことを告げ、皇太子(懿宗:イソウ)に即位を命じた冊文(天子から臣下に授ける命令書)の中に【薬石無効】の言葉があります。

<文例>
・「もはや薬石無効、医師の努力もここまでです」と担当医は頭を下げた。

・誰もが薬石無効と諦めた病だが、新薬の開発が進み来年には実用化されるらしい。

地下鉄サリン事件直後の医師対応

1994年(平成6年)年6月27日、長野県松本市で発生した松本サリン事件。しかし、これは序章に過ぎなかったのです。

1995年(平成7年)3月20日に、東京都で地下鉄サリン事件(地下鉄駅構内毒物使用多数殺人事件)が起きました。
これは、宗教団体のオウム真理教によって、帝都高速度交通営団(現在の東京メトロ)で営業運転中の地下鉄車両内で神経ガスのサリンが散布され、乗客及び乗務員、係員、さらには被害者の救助にあたった人々にも死者を含む多数の被害者が出た事件でした。

当時、近隣の病院は被害者が数百人にも及んだため、受け入れが十分に出来ませんでした。

そのとき、東京都中央区の聖路加(せいるか)病院には、広い廊下やロビーに、医療器具を設置できる準備が壁の中に仕込まれていました。
受付ロビーの長椅子は被害者のためのベッドに早変わりし、次々と運び込まれる数百人にも及ぶ被害者の受け入れと非番の医師たちの積極的な対応のおかげで、救急病院体勢が瞬く間に整えられたのです。

この当時、災害・救急医療の指揮を執り、数百人の被害者全員の受け入れ指示を出したのが、聖路加病院で80歳を超えてもなお現役の医師、日野原 重明先生であり、彼のこの臨機応変な対応が世間では大きく注目されました。

「自分には使命がある」と思って毎日を大切に生きていれば、それが生きがいになってくる、というのが先生の持論でした。

日野原先生の薬石無効疑似体験

日野原先生がが医師を目指したのは、ある経緯がありました。
彼が10歳のとき、母親が命の危機を迎えます。

働き者でやりくり上手だった母、満子さんが急に倒れたのは、日野原先生が10歳の時。

尿毒症で夜中にけいれんを起こし、意識を失ってしまいます。
かかりつけ医師は「非常に重篤だ」と言いましたが、
日野原少年の「助かるの?」と心配そうな質問に、医師は黙ってうなずいてくれました。

医師の処置のおかげで命をとりとめたお母さん。このときの経験で日野原少年は医師の道を目指します。

経歴
1937(昭和12)年 京都帝国大学(現:京都大学)医学部を卒業
同年~1939(昭和14)年 京都帝国大学 医学部 三内科副手

副手として勤めた2年間は、なんと無給だったそうです。
どのようにして生活していらしたのか・・・。

◆1951(昭和26)年 アメリカ・エモリー大学に留学
すでに医師となっていても、日野原先生は勉学を怠りませんでした。

彼は予防医療の重要性を唱え、1954年、聖路加病院内に民間として初の「人間ドック」を開設しています。

専門は内科学。成人病と呼ばれていた脳卒中、心臓病などを「習慣病」と呼んで病気の予防につなげようと1970年代から提唱、旧厚生省は96年になって成人病を生活習慣病と改称し、今では広く受け入れられています。

「生涯現役」として著作や講演など幅広く活動してきた聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんは、2017年7月18日、呼吸不全で死去。105歳でした。

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日野原先生の名言

私が若いときより少しはマシな医者になっているとしたら、それは、大勢の患者さんに育てられたから。

死にゆく患者さんを前にして、私はいつも医学の限界を知らされます。
どんなに最先端の医療をもってしても、死を征服することはできません。
「いのち」に対して、ますます謙虚になるよりほかありません。

人間にとって最も大切なのは「命の長さ」だと思っている人が多い。
しかし、私が出会った人を振り返ってみて思う。
その人の命が素晴らしい命だと思える人においては、「命の長さ」は問題ではない。

生きがいとは、自分を徹底的に大事にすることから始まる。

私たちの身体は土でできており、身体は土に還る。
私たちは、この土の器の中に、はかり知れない宝を入れることができる。

鳥は飛び方を変えることはできない。
動物は這い方、走り方を変えることはできない。
しかし、人間は生き方を変えることができる。

これまでの教育は、出来上がったデータを記憶させる教育であった。
困難な問題にぶつかったときに、問題解決ができるような能力を与えられていない。
本当に学ぶべきなのは、問題とどう取り組むか、どういう戦略を立てるべきかということである。
学校を出てからも自分でできるような頭の仕組みをつくる。
そして、その仕組みに従って生活をし、行動することが必要。

自分のためにでなく、人のために生きようとするとき、その人は、もはや孤独ではない。

多くの人が、自分の財産や名声や地位を得るために、全力投球している。
それなのに、財産やお金よりも大切な、自分の命のために全力投球している人は少ない。

あとがき

「薬石無効」のように、どんなに手を尽くしても、その甲斐なく、亡くなってしまうのは、本当に悲しいことです。

でも、日野原先生がおっしゃるように、素晴らしい命だと思える人においては、「命の長さ」が問題ではありません。
自分のためにでなく、人のために生きようとするとき、その人は、もはや孤独ではないのですから。


聖路加国際病院について

一般病棟はオール個室の病院。ですから、少々費用が高めに感じるのも仕方ないのでしょうか。アメニティが完備され、屋上庭園などもあり、くつろげそうです。また、部屋の大きさは変わらないがアメニティなしで一応差額なしの個室もあるとのこと。icuなどは相部屋ですがかなりプライバシーが確保されています。

yakuseki-mukou3注:写真は聖路加国際病院ではありません

外来は完全予約制

外来は完全予約制で割りとスケジュール通りでいけます。時間が空いたら教会に行ったり、スタバでコーヒー買ったりできます。

しかし、初診時は紹介状が必要です。いきなり行った場合、医療費とは別に「国が定めた初診時特定療養費5000円」が生じます。(誤解している方がいますが、病院が独自に請求しているわけではありません)

前回の受診をしてから1~3ヶ月以上経過している場合も、紹介状がないと再度徴収されます。
入院ベッドが500床以上の大型病院は3000~10000円程度かかります。
聖路加は520床なのでこの対象なのですね。

入院手続きの際に無差額部屋の希望を必ず訊いてくれるので、ダメ元で希望すれば良いと思います。(希望したけど無差額部屋が空いていなくて、止む無く払った差額ベッド代は、医療費控除の対象にできたはずです)

この聖路加国際病院は、大規模災害にも対応できるよう、待合室やチャペルの壁には酸素吸入や吸引に必要な医療器具が埋め込まれています。

地下鉄サリン事件の時には搬送される被害者を誰一人として断ることなく、被害者の9割を一手に引き受けたという過去を私たちは忘れてはならないでしょう。


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