
★今日の四字熟語は★
一利一害(いちりいちがい)
一利一害の意味とは
良いこともあれば、悪いこともある。
利益もあるが害もあり、どっちもどっちであること。
良い点と悪い点があり、完全ではないこと。
字のまんまですね、一利一害ってこと。
でも、元の意味は違うんです。
一利を興すは、一害を除くにしかず、
一事を生かすは一事を省くにしかず、
と言う言葉がもとになります。
つまり、
新しく利益のあることを始めるより、
害を減らした方がいいということ。
『元史(げんし)』
耶律楚材伝(やりつそざいでん)より
一利を興すは一害を除くに如(し)かず
(一つの利益になることを始めるよりは一つの害を除いたほうがよい)
<あらすじ>
ジンギスカンがとても信頼していた
「長ひげ先生」こと、耶律楚材(やりつそざい)は、
ジンギスカンが満州を攻めて遼の王国を滅ぼした時、26歳だったが、
ジンギスカンに一目で惚れ込まれ、
三十年余り複雑多難な蒙古の国政を運用したとされた。
この耶律楚材の名言である「一利一害」の意味について
百朝集の中で安岡正篤氏が次のように解説されています。
事件が次から次へと増加してゆくと、その繁雑に紛れて、だんだん
余裕も反省もなくなってしまう。そして結局破滅に陥るものである。絶えず問題を省みると共に省いて、
手にも心にも余裕を存することが必要である。役所を「省」と称することは誠に深意がある。
然るに役人政治家ともなれば、功名心に駆られ、人気を博そうとするから、
どうしても何か目新しいことを行ってみたい。整理とか償却とか節約とかいうようなことは、とんと行り栄えがない。
そこで「一利を興す」方に傾いて、「一害を除く」ことはなかなか行らない。
その中に積弊が手の着けようもないほどになってしまう。これが革命を誘発するのである。
人は「無事」を祈りながら、何と我から「多事」にしていることであろう。
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ポジティブな行動は良い行いであり、結果いいと思っていたのですが、
自分の行動を第三者の目で省みることを忘れてはいけないということなのでしょうか‥
<用例>
・罪がない代わりに、たいへん計算が面倒になってきた。やっぱり一利一害だ。
(夏目漱石『三四郎』より)
・親が子となるが故に子の一利一害は己の利害の様に感ぜられ、
(西田幾多郎『善の研究』より)
・パソコンは便利だが、漢字を忘れてしまうので一利一害だ。
・エネルギー資源として原子力は電力確保などで有用ですが、
地球規模での環境問題の影響を長期視点で考え合わせれば
一利一害ともいえるでしょう。
あとがき
四字熟語の「一利一害」から、連想したことがある。
それは、物理学者のスティーブン・ホーキング博士の考えだ。
「宇宙にはたくさんの生命体がいると
考えられるが、高度に発達した文明は
滅びてしまう」と彼は語っていた。
突拍子もないことかもしれないが、
次の私の連想はどうだろう?
人類の歴史は想像を絶するほど古くから存在していたのではないかと。
人類は何度となく滅びた、そしてまた現在、再び滅びかけているのだろうか。
人類が言葉を知るようになって文明が栄えた。
人類の先祖として考えられる知的生命体の文明は高度に発展し、
そして滅びることを繰り返し、今の人類も同様の道を歩いているのではないか、と。